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英語が話せるようになるまで(2)中学生編

わたしは1980年代半ばに公立中学校に進学しました。当時は、スカートの丈や前髪の長さ、靴下の色などを規制した学校が多かったとは思いますが、わたしが通った学校はその中でも特に厳しいところで、毎朝校門で厳格な服装チェックがありました。

毎朝ドキドキしながら重い気分で校門を通過した後、授業を受ける訳です。当時は小学校英語の時間はありませんでしたので、中学から英語の授業が始まりました。授業内容は、教科書を読んで日本語に訳す、英単語の意味を日本語で覚える、綴りを50回書いて覚える、文法の形とその意味を日本語で覚える、というスタンダードなものだったと思います。

英語の授業が好きだったかというと、それほど好きという訳ではありませんでしたが、英語は重要な科目と言われていたので勉強は頑張りました。そんなわたしの英語学習方法は、とにかく教科書を丸暗記するというものでした。母から教科書付随の音声テープを買ってもらい、家でそのテープを何度も聴き、後についてリピートして暗記しました。

教科書を丸ごと覚えているので、中間、期末試験は上手く乗り切ることができました。文章並べ替えや空欄穴埋めなどはお手のもので、何も考えなくても暗記したものをそのまま書けばいいのです。日本語を英語に訳す問題も、暗記したものを吐き出すだけです。スペルは不得意だったのでよく間違えましたが、大きなダメージにはならない感じでした。

このように丸暗記をすると試験を乗り切ることはできますが、それで英語が話せるようになるかというとそのようなことはありません。丸暗記が外国語習得にとって効果的かどうかについては賛否あるところです。トロイの遺跡を発見したドイツ人考古学者のハインリッヒ・シュリーマンは、約15か国語を操ったとされますが、彼の学習方法は文章の丸暗記だったそうです。ただ、彼がマスターした言語は、英語、フランス語、オランダ語、スペイン語、イタリア語など、ヨーロッパ語圏のものが多く、元々、単語や文法に親和性があることが多いです。そもそもヨーロッパにいけば、数カ国語を自由に操る人がたくさんいますので、この丸暗記勉強法をそのまま日本人の英語学習に応用できるかは疑問です。

そういう訳で、私の中学英語教科書丸暗記がその後の英会話のスキル習得にどれくらい役に立ったのかは分かりません。ただ、わたしは耳から学習するのが得意な傾向にあったようです。英語の文章を目で読んでいるよりも、テープを再生して音で聴いた方が頭に入りやすいと自分で感じていました。これはその後もずっと変わりなく、今でも音を中心に学んでいます。

さて、学校の英語の授業は受け身の姿勢で受けていたわたしですが、夏休みや春休みには自主的にNHKラジオ「基礎英語」を毎日聴いていました。このラジオ基礎英語は楽しい番組でした。心躍るような楽しさがある訳ではありませんが、毎日少しずつ話が展開していき、状況に応じた英語表現が学べるのがとても面白かったと思います。ここでも耳から英語を入れてリピート練習を繰り返し、ネイティブ・スピーカーの先生の発音や抑揚を真似していました。

このように中学時代は、淡々と教科書を丸暗記し、長期休みにNHKラジオ番組を毎日20分聴くというのを繰り返していただけでした。もちろん、英語が話せるようになった訳ではありませんし、外国人と話す機会があった訳でもありません。わたしは、平凡な中学生時代を過ごしました。