大人になってから英語を学習し始めて、ネイティブ・スピーカーのような発音になるのは可能でしょうか。
通常、発音の習得は幼少期から始めると上手くいくと言われます。大人の学習者の大半は発音矯正で苦労しますし、練習をしてもなかなか母語話者のようにはなれません。
ただし例外もあって、大人になってからでも、適性の高い人が正しい特訓を積んで、ネイティブ・スピーカーの発音に近づくことがあります。例えば、プロの歌手の中にそのような事例が多くあるように思います。
しかし、ネイティブ・スピーカーのような発音であることはそんなに重要なことなのでしょうか?
ネイティブ・スピーカーの発音って何?
ネイティブ・スピーカーの発音に憧れるのはよくわかります。流暢で明瞭な発音はカッコよく聴えますし、英語上級者のような印象を与えます。しかし、世界では、ネイティブ・スピーカーが絶対的に正しいという考え方は少数派になってきているのです。
まず考えたいのが、「ネイティブ・スピーカーの発音とは何?」ということです。
アメリカ人とイギリス人はどちらも英語を母語としますが、発音が違います。オーストラリアはイギリス系と言っても、やはり発音は違います。更に、イギリスの国内でも地方によって、もしくは階級によって発音が違います。チャールズ王の英語とロンドンの一般市民の英語は発音が違うのです。
このようにネイティブ・スピーカーと言っても千差万別で、一つの発音に絞ることはできません。
ネイティブ・スピーカーが正しいのか?
次に考えたい点は、「ネイティブ・スピーカーの英語が絶対的に正しいのか?」という点です。
イギリス英語は、アメリカ英語より正しいのでしょうか?
更に、世界には英語を母語とはしなくても公用語として用いている国が55カ国以上あります。例えば、シンガポールやインドやフィリピンなどです。
英語のネイティブ・スピーカーの人口は約4億人ですが、英語を公用語とする人口は約21億人と世界人口の1/4以上を占めます。英語を公用語とする人口は、英語のネイティブ・スピーカー人口の5倍以上いるのです。このような状況の中で、どの発音が正しいかを誰が決めるのでしょうか?
英語は世界の共通語として用いられるようになりました。それに伴って、各国や各地域で使われている英語を同等のものとして捉える考え方が主流になってきています。
つまり、ネイティブ・スピーカー信仰や、ネイティブ・スピーカーが絶対に正しいという考え方は少なくなってきているのです。
ネイティブ・スピーカーの発音を目指すのが良いのか?
このような理由から、世界ではネイティブ・スピーカーのように話すのが重要なゴールではなくなってきています。
ネイティブ・スピーカーのようでなくても、グローバルな環境で相手に伝わる発音で話すことができれば良いのです。
ただし、だからといって全く発音矯正をしなくても良いということではありません。日本人に特徴的な発音で、意味が通じにくいものは矯正していくに越したことはありません。しかし、ネイティブ・スピーカーが唯一のモデルであるという時代は過去のものとなったのです。
では、目指すべきゴールとは何でしょうか?
- 自分の伝えたいことが通じる
- コミュニケーションを効果的に行うことができる
そのような発音を目指すことをお勧めします!